住宅地としての豊洲の歴史の先駆けとなるタワーマンション
2006年に、豊洲2・3丁目の再開発プロジェクトとして「まちびらきイベント」が開催されると同時に、豊洲は都心に誕生したベッドタウンとして人気を集めてきた。いまでは数々のタワーマンションと商業施設、豊洲文化センターなどの文化施設が建ち並び、住宅地としての落ち着きのある姿を見せるようになっている。
電線のない美しい景観も豊洲が人気を集める理由の一つだろう。豊洲地区では「まちづくりガイドライン」に沿って開発が行われ、電線を埋設、電柱も道路からなくした。また水辺が開放されてキャナルウォークやベイウォークと呼ばれる遊歩道や公園が整備され、歩くのも楽しい街になっている。
今回訪れた「THE TOYOSU TOWER」は、豊洲におけるタワーマンション誕生の先駆けの1つともいえる物件だ。東京メトロ有楽町線「豊洲」駅から徒歩6分、東京臨海新交通ゆりかもめ「豊洲」駅から徒歩7分のところに立地している。
同物件はキャナルサイドに位置した地上43階建、免震構造で総戸数825戸の大規模・高層タワーマンションだ。周辺には約190もの文化施設・ショップ・レストランが集まった「アーバンドックららぽーと豊洲」、豊洲公園などがあり、利便性も十分だ。
築14年を迎え、より住み心地が良くなるように、このマンションでは日々カスタマイズが続けられていると耳にした。同マンション管理組合の共用・コミュニティ・広報部会の部会長を担う安井丈拓さん(2022年1月取材当時)にお話しを伺った。
保育所をコンビニへ、コンビニをキッズルームへ、ニーズに合わせてカスタマイズ
「私自身は2016年に入居しました。居住者専用のミニ・コンビニエンスストアと旧居住者専用保育所をそのまま活用したキッズルームがあったのですが、利用者の利便性向上と管理組合の財務体質適正化の観点から、管理組合の理事としてこの2つの共用部の一体再整備に取り組んできました。
もともとキッズルームだった場所を改築して2021年12月には外部の人も利用できるコンビニエンスストアとしてオープンすることができました。2022年3月には、以前ミニ・コンビニエンスストアだったところが新たなキッズルームに生まれ変わる予定です。」(安井さん。以下コメントはすべて同じ)
長期的な視野を持って、収支を考えたマンション共用部の活用を実施
マンションの管理組合の活動というと、以前は管理会社に任せるというイメージがあったようだが、最近では若い世代が積極的に取り組むイメージができつつある。特に豊洲のような新しい街づくりから誕生した場所では、若い世代の理事が増えてきている。
「私も最初からマンション管理について積極的というわけではなく、抽選で管理組合の理事をするようになってから、興味を持つようになりました。
駐車場収入の減少、清掃スタッフの人件費の高騰、消費税のアップなど、時代やニーズとともに変化するマンション管理組合の収支を見直す機会があり、マンションとしての柔軟さと強い財務体質を構築する必要があると感じたのです」
同マンションの管理組合は3つの部会に分かれている。防災部会、設備部会、共用・コミュニティ・広報部会だ。現在、安井さんは共用・コミュニティ・広報部会で部会長として活動している。
直近の取り組みとしては、近年問題になっていた駐車場や駐輪場の余剰と、増える電動式自転車への対応が挙げられる。
「まず駐輪場は古くなって修理が必要なものもありましたが駐輪場施設を単純に入れ替えるのではなく、一区画を撤去し、その部品を他の駐輪場施設の修理に使用しています。
そこで生まれた空き区画にはトランクルームを新設しました。トランクルームは大人気で現在は満室です。みなさん収納スペースとして活用しているようです。また、最近では電動式自転車が増えてきており、当マンションで主流の2段式駐輪場には入り切らない車種も多いことから、平置きタイプの駐輪場も増やしました」
また昨今のクルマ離れにより余った駐車場を活用して、カーシェアリングのシステムも導入、現在4台が稼働している。電気自動車の普及への期待も込めて、EV充電設備も整えた。
トランクルーム、平置き駐輪場の増設、カーシェアリングの設置も管理組合にとっては収入改善に繋がる施策だ。
「私自身、カーシェアは買い物などで利用することが多いです。自家用車を必要とするほどクルマを利用するわけではないけれど、たまにクルマが必要になるときはあるので便利ですね」
共用施設は住人の声を柔軟に反映して使いやすく
大規模マンションのメリットはさまざまな共用施設が整っていることだ。
共用施設が集まる「ヴィレッジハウス」には、落ち着いた雰囲気に包まれたライブラリー、キッチン設備の整ったガーデンダイニング、フィットネスルームなどが揃う。同時にその活用方法も重要なポイントになってくる。コロナ禍の影響で、そのニーズも大きく変わってきているようだ。
「以前と比べてライブラリーを利用する人が増えました。やはりリモートワークで自宅では集中できないという人が仕事をされる例が増えています。私自身も小さな子どもがいるので、ライブラリーの存在はありがたいです。当節の事情に合わせて、リモートワークに利用しやすいようにしてほしいという声も聞こえてきており、部会で色々と検討をしています」
「フィットネスルームも利用状況に合わせて、設置するマシンの種類を変えました。以前は朝と夜に利用者が集中していましたが、最近は利用時間帯が幅広くなり、よりたくさんの方が使うようになっているようです。私自身も仕事の合間に使用しており、気分転換にもなるので、マンション内にこのような施設があって良かったと思っています」
駐輪場の上を家庭菜園に。子どもが野菜好きになるメリットも
ユニークな試みとしては、駐車場棟の屋上のスペースを、家庭菜園として区画割して貸し出している。実は安井さんも借りていて、野菜や花を育てているとか。
「こんな都会の近くで野菜を作るイメージはないですよね。私の2歳の息子も自分で野菜を育てていますが、楽しそうに土いじりをしたり、水やりをしたりしています。おかげさまで野菜が大好きになりました」
車寄せにキッチンカーが訪れ、日替わりでグルメを楽しむ
THE TOYOSU TOWERの車寄せには、多彩なキッチンカーが毎日代わる代わる訪れ、住人の人気を集めている。今でこそ、コロナ対策で公開空地の利用が規制緩和されたり、マンション敷地内でキッチンカーが営業したり、ということは珍しくないが、こちらの取り組みはコロナ禍前から始まっていたという。
「マンションの敷地にキッチンカーに来てもらうのは、住人にとっても管理組合にとってもメリットが大きいと思います。日替わりでいろいろなキッチンカーが来るので、楽しみにしている人も多いようです。私も残業で遅くなったときなど利用しています。帰宅時にキッチンカーを見るとほっとしたりしますよ」
この街の将来性とバランスのいいマンションの共用部に満足して購入
マンションの管理組合の広報として活躍しつつ、このマンションの魅力を語ってくれた安井さんに、住人の立場からもマンションについて感想を聞かせてもらった。
「私は6年前からこのマンションの住人に加わりました。当時はまだ子どもがいなかったのですが、子育てに適した環境だと思いました。銀座や東京にも近く、豊洲は都内の他の場所に比べてコストパフォーマンスが高いと思います。加えてこのマンションは共用施設のバランスがすごくいいと思って選びました。各施設の動線も良いし、長く住むにも暮らしやすいと思います」
最上階43階には、夜景を眼下にくつろげ、カウンタースペースもあるスカイラウンジがあり、ルーフトップには都心方面を望めるスカイデッキもある。
「夜には東京湾などの夜景を眺めたり、そよ風に吹かれながら過ごしたり、タワーマンションならではの気持ちよさがあります。
また27階には3つのテーマでつくられたゲストルームが用意されているので家族や親せき、友人が来たときに泊まってもらうこともできます。ラウンジやデッキからは見える方角が異なるので、自宅とは違う景色が楽しめるのも気分転換になりますね」
次なる課題は、THE TOYOSU TOWERにとって、初めてとなる大規模修繕工事だ。2024~2025年ごろに実施予定で、すでに専門委員会を立ち上げて取り組んでいる。
「大規模修繕工事も、きちんと収支を考えて無駄のない刷新をしていきたいと話しています。他にも日々、共用施設の活用を考えていきたいと思っています」
安井さん自身がこのマンションに愛着を持ち、長く住み続けたいと思っているだけでなく、子どもたちにとってもTHE TOYOSU TOWERが故郷となるわけで、そのためにも長期的な視野で経営管理していく必要があると考えていることが、お話を伺っていても伝わってきた。
共用施設を取材している際には、安井さんと管理会社のスタッフの連携がとてもスムーズなことにも驚いた。また大規模修繕が終わったころに話を伺いたいと思うほど、日々革新を続けているマンションだ。