軽快な交通アクセスと敷地内の緑が魅力
京浜急行本線の神奈川新町駅は横浜港に面した潮風香る街。そこかしこに運河が流れ、停泊する漁船や釣り船が港町の風情を漂わせている。「バナナふ頭」の愛称で知られる出田町ふ頭をはじめ港湾物流の一翼を担う一方で、近年は住宅地としても注目されている。街を歩いてみると下町のような気さくな雰囲気があって暮らしやすそうだ。
ちなみに、神奈川新町駅のある横浜市神奈川区は、その昔、旧東海道の神奈川宿としてにぎわい、幕末の横浜開港の折に各国の領事館が置かれた寺院が点在している。異国の文化を受け止めた横浜の歴史に触れられるのも魅力といえるだろう。
そんな街に立つ「ライオンズマンションセントワーフ横濱」は、ベイエリアらしいリゾート感を纏ったマンションだ。名前が示すように、デザインコンセプトは波止場(ワーフ)。住人や来訪者を出迎えるウエルカムゲートではヤシの木々が葉を揺らし、南の島にやってきたような旅情をかきたてる。
取材に応じてくださった管理組合の理事長、田中秀宜さんは、竣工時からこのマンションに居住。まずは住み心地から伺ってみた。
「生活していてありがたいのはアクセスのよさですね。神奈川新町駅までは歩いて5分と近く、電車に乗れば横浜まではわずか4分。品川も25分程度で出られます。京急線は羽田空港にも行きやすいですし、徒歩圏内のJR東神奈川駅に出れば新横浜駅から新幹線に乗れます。出張や旅行にもすごく便利なんですよ。しかも、首都高速の東神奈川インターもすぐ近く。車での移動も快適です」
そうした地の利とともに、敷地内の緑の豊かさもこのマンションの大きな特色になっている。約1万8000㎡の敷地に対して空地率は65%に及び、その“余白”を埋めているのが1万本を超える樹木だ。例えば、ゲートから続くアプローチは“フォレストガーデン”と名がつく通り、右も左も緑一色。ゆるやかにカーブを描く通路に沿ってシラカシ、ミモザ、サルスベリ、タラヨウといった多彩な樹木が植えられている。分譲時のパンフレットに謳われる言葉を借りれば、まさしく“港の森”。日常の動線がリフレッシュ空間でもあるなんて羨ましいの一言だ。
竣工15年目から段階的に庭やアプローチをリニューアル
港の森のもう一端を担うのが、ブライトスクエアと名付けられた中庭だ。人工芝の広場を縁取るように樹木が茂り、一角には花壇もつくられている。「この中庭は子どもたちに大人気なんですよ」と田中さんが言うように、小学生ぐらいの子どもたちが元気に駆け回っている。同じ港の森でもこちらは遊べる森というわけだ。
もっとも、中庭に子どもたちが集まるようになったのは比較的最近のことだという。
「4年前に大改修をしてからですね。もともと中庭は丘状の盛り土がされて、中央にも背の高い木が何本か植えられていたんです。それが長年の間に芝生ははげて土が剥き出しになり、木も元気がなく枯れかけてしまった。居住者から『せっかく中庭があるのにもったいない』『子どもたちが安心して遊べる場にしよう』という声が挙がり、大々的にリニューアルすることが決まったんです」
それに先立ち、植栽管理会社を現在の東邦レオに変更。改修は同社を中心に進められた。まず行ったのは住人アンケート。その意見を踏まえながら、丘を削って平らにし、中央の2本の高木を伐採して人工芝の広場にするという現在のプランが採択されたという。
そして約2カ月の工事を経て、新たな中庭が完成したのは2019年9月。翌月に開催したお披露目イベントは大人も一緒になって大縄跳びをしたり、参加者みんなで花壇に花を植えたりと大盛況だったそうだ。
中庭に続いて着手されたのが、経年による劣化が課題に挙がっていたエントランスアプローチのリニューアルだ。こちらは2021年度から3期にわたる計画が立てられた。
「1期目は舗装の改修がメイン。傷みが目立った樹脂舗装をウッドデッキ調のスタンプコンクリートに変更しました。スタンプコンクリートとはコンクリートを流し込んだ後、固まりきる前に木目などの型で成形して仕上げる工法。従来は色剥がれや雨の日に滑りやすいといった問題があったのですが、最新のものはそれらが解消されているとのことで採用することにしたんです。もちろん、事前に革靴、ハイヒール、サンダルと履物を替えて滑りにくさも検証しましたよ。結論としてスタンプコンクリートにして大正解。見た目もかなりよくなりました」
同時に、ウエルカムゲートの前の植栽も見直しがされ、門と同じ琉球石灰岩を配した洗練されたデザインに一新されている。旅情をかきたてられたのはその植え込みの効果でもあったのかも。
続く2期目の工事では自動車用のアプローチにあるゲストパーキングや東屋の改修が実施された。行われたのは今年の2月から3月にかけて。4月の初旬にはやはりお披露目会を開いたそうだ。
「ゲストパーキングは従来、縦列駐車で3台分しかなかったのですが、スペースを広げて斜め置きにすることで8台分に増やしました。駐車するときは管理室で許可をもらう必要がありますが、最長24時間置くことができます。親戚や友だちが遊びに来た時も、敷地内に無料で停められるのは助かると好評ですね。宅配の車の一時置き場としても利用でき、路上駐車をしなくて済むようになりました。東屋については石積みの花壇をつくり、アプローチからスロープでつなげて段差をなくしました。工事のときは私も石を積むのを手伝ったのですが、なかなかいい出来でしょ?(笑)」
そしていよいよ来年度は最終期。スタンプコンクリートが好評だったため、より広範囲に取り入れるほか、東屋の床を石畳にする計画もある。
それを終えれば、田中さんの理事長としての大仕事も一段落するわけだが、この大掛かりなリニューアルを牽引する熱意はどこから生まれているのだろうか。
訊ねてみるとこんな答えが返ってきた。
「6年前、勤務先の研修で割れ窓理論というのを教えられたのですが、ご存じですか?割られた窓ガラスをそのままにしているとさらに割られる窓が増えて、やがて街全体が荒廃してしまう。だから、小さなことでもすぐに対処することが大事という教えです。マンションの管理も同じだと思うんです。小さな綻びにすぐに対応するよう心掛ければ、良好な住環境を保つことができる。もちろん、それはマンションのバリューアップにもつながると思います」
少数精鋭の共用施設で港の森を満喫
ささいな傷みもその都度、補修して住環境を保つーー。その意識は、手入れの行き届いた共用施設からも感じ取れる。それらがあるのは2階建ての共用棟“ハーバーラウンジ”。ロビーラウンジ、キッチン付きの多目的ルーム、ゲストルームはエントランス側に配置され、木々の緑を楽しむことができる。いずれも天井から床までの大きな窓があり、開放感は抜群だ。逆に中庭に面しているのが1階にあるキッズルーム。直接、中庭と行き来ができるので、外遊びに疲れたら室内でちょっと休憩……といった使い方もできそうだ。
「ただ、マンション内の子どもの年齢が上がって、最近はあまり使われなくなっているのが実情です。そのまま残すか、別の用途に使うか。これから理事会で話し合っていくことになるでしょう」
ここまでに紹介したのは共用棟にある施設だが、実はもう1カ所、リラクゼーションに絶好の空間が設けられている。11階建ての住居棟の屋上にある“スカイポート”だ。
普段は開放していないが特別に上がらせてもらうと、そこには横浜港のシンボルである横浜ベイブリッジやみなとみらい21地区の風景が!視界を遮るものはなにもなく、まさしく絶景。横浜港の花火大会の特等席であり、かつては花火見物をするイベントを開いたこともあったそうだ。コロナ禍も一段落したので、いつか復活する日が来るかもしれない。
理事会を効率化し、主体的に関われる体制に
管理組合の精力的な取り組みはハード面だけでなく、ソフト面でも示されている。
その1つが理事会の効率化だ。
「従来の理事会は朝から夕方まで続き、理事の大きな負担になっていました。原因の1つはすべての議題を全員で話し合っていたこと。理事の人数も多かったのです。そこで理事の定数を20名に絞り、リニューアル班、コミュニティ班、リビング班の3班に分け、それぞれでまず話し合いをして煮詰めてから全体の会議にかけるようにしました。1班の人数は6〜7名なので、そのほうが話し合いが進むのですね。実際、この形式にしてからは午前中で理事会が終わるようになりました」
さらに、理事会の出席率を上げるため、年12回の理事会のうち7回以上出席した理事には1回1000円の出席手当が支給される仕組みを導入。逆に、輪番制で理事がまわってきた時、どうしても受けられない場合には理事会協力金として、金額を支払うことで辞退ができるようにもしている。これによっても理事会が活性化。主体的な活動も生まれているそうだ。
では、理事会の3つの班ではどのような活動を行っているのだろう。
リニューアル班が受け持つのは、先述した庭やアプローチの改修。コミュニティ班では主にイベント運営を行っている。
「最も盛大なのは12月に行うウインターイベントですね。クリスマスリースやキャンドルライトなどのワークショップを行うほか、ピンポン玉を使ったイルミネーションづくりも毎年恒例です。ほかの時季もワークショップはよく開いていて、昨年は秋のグリーンデイに寄せ植え講座を行ました。また、今年の6月にはハーブの植え付けイベントを行い、育てたローズマリーを秋に収穫してチョコレートをつくる企画も立ち上がっています」
田中さんによれば、コロナ禍でイベントが開けないときにはオンラインで酒蔵ツアーなども実施され、こちらも人気だったそうだ。
「共用棟を彩るひな祭りや七夕などの飾り付けもイベント班が担当しています。七夕の笹飾りは毎年、住人参加で行うのですが、150名以上が参加した年もあったんですよ」
一方、リビング班では生活のなかで持ち上がった課題の解決のほか、防災にも取り組んでいる。
「防災マニュアルの作成や備蓄品の整理などを行っているのがリビング班。今年5月に自動販売機を電子マネーも使えるタイプに入れ替えたのですが、その選定もリビング班を中心に行い、災害時に停電になっても商品を取り出せる災害救援ベンダーになりました」
年1度の防災訓練についてもやはりリビング班を中心に行っているが、昨年は方式が変わり、近隣の浦島町内会や隣に立つ大規模マンション、ベイステージ横浜432と合同で実施するようになった。
「防災関連の地域の集まりで顔を合わせたときに、『合同でやってみましょう』という話が持ち上がってスムーズに決まりました。三者合同で行ったほうが大掛かりな訓練ができますし、地域の結束も高められますよね。実施場所は消防署の出張所近くの公園とベイステージさんのエントランス前。50名以上が集まって消火器やAEDの使い方を学び、消火栓を使って放水訓練もしました」
そんな縁もあって、浦島町内会から両マンションに「うちの夏祭りにぜひ」とお誘いもあったという。
「あいにく私は参加できなかったのですが、子ども神輿や山車が出て盛り上がったみたいですよ。そもそも子どもたちは同じ小学校に通っているわけで顔なじみも多い。これからもさまざまな形で地域の交流を深めていきたいですね」
近隣とのコミュニティを育めば、住み心地はさらによくなり住人の街への愛着も深まっていくだろう。
竣工から来年でちょうど20年。改修によって再生した港の森とマンション内外に広がる輪によって、その輝きはこれからも増していきそうだ。