リビングの隣にある和室を取り込んで、広いLDKにする場合、どれくらい費用が必要でしょうか。どんなメリット・デメリットがあるのでしょう。費用の目安や注意点などを、一級建築士の柏崎文昭さんに教えてもらいました。あわせて、リビングと和室をつなげて広々LDKを実現した施工事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
記事の目次
リビングと和室を一体化するリフォームのメリット・デメリット
例えば14畳のLDKに、隣の6畳の和室を取り込めばLDKが20畳に広がります。またマンションでは、リビングの隣が和室という間取りがよく採用されていましたが、子どもが成長するなどライフステージの変化で和室を使う頻度が減ったことで、リビングと和室を一体化するリフォームが検討されたりするようです。
まずは、リビングと和室を一体化するリフォームのメリット・デメリットから確認しておきましょう。
リビングと和室を一体化するメリット
- リビングが広くなる(開放的になる)
- 和室側に窓があるなら採光面が広がり明るくなる
- 和室だった部分に家具を置きやすくなる
- 掃除道具を変える必要がなくなり、掃除がラクになる
- 和室にあった畳や障子のメンテナンスが不要になる
以上は取り込んだ和室をリビングと同じフローリングなど畳以外の床材にして、一体化した場合です。いわば和室の洋室化&一体化です。ただし後述しますが、和室を和室として残しつつ、リビングと一体化するリフォームも可能です。
最も大きなメリットは、従来と比べてリビングが広々とすることでしょう。例えば8畳のリビングと6畳の和室を一体化すれば、リビングは14畳、11畳のリビングと6畳の和室なら17畳……というように広いリビングをつくることができます。
現状のリビングの広さに合わせて備えたソファが小さいと感じているなら、ゆったりとした大きめのソファが置けるようになりますから、より寛ぎやすくなります。和室には合わないためリビングに無理矢理置いていた家具などがあれば、その分リビングが広く感じられるでしょう。
また一体化した和室に窓があった場合、リビングに新しい窓が追加されるのと同じことですから、リビングがより明るくなります。
その他、細かいことですが、フローリングで統一すればフロアワイパーで旧和室部分も掃除ができるなど、掃除も簡単になります。
リビングと和室を一体化するデメリット
- 幼い子どもがのびのび遊べる場所がなくなる
- さっと寝転べるスペースがなくなる
- 両親など来客の宿泊に対応するのが難しくなる
いずれも畳のメリットがなくなるということです。例えば子どもが独立して、これからは夫婦2人で暮らすのであれば、上記をさほどデメリットと感じないかもしれません。
だからといって、子どもが成長するまでは我慢、というわけではありません。最近は和室を残しつつリビングと一体化するリフォームも増えているのです。空間としては広々としますが、和室(畳)のメリットも享受できるリフォームです。
リビングと和室を一体化するリフォーム費用
リビングと和室を一体化するとリフォーム費用はどれくらい必要になるのでしょうか。下記のような間取りをリフォームする場合で見てみましょう。
モデルケース:70m2の3LDK
上記の間取りにおいて、LDKのフローリングや天井・壁のクロスはまだ十分使えるとします。そこで6畳の和室部分をフローリングに張り替えて洋室化し、LDKと同じ空間にするリフォーム費用の目安を算出しました。この場合に必要になる、主なリフォーム工事は下記の通りです。
- 和室の床材の交換:和室にリビングと同じ複合フローリングを敷く
- 和室の天井と壁のクロスの交換:和室の天井と壁のクロスを張り替える
- 押し入れの洋式化:和室にあった押し入れの襖を、洋室仕様の折り戸にする
- 間仕切りの設置:和室とリビングの間に引き戸を入れ、必要に応じて仕切れるようにする
なお「間仕切りの設置」では、敷居や鴨居、垂れ壁も撤去し、 必要に応じて仕切れるようにカーテンやバーチカルブラインド(縦型ブラインド)を備える方法もあります。どちらも費用はほぼ同じです。
それぞれの工事内容をさらに詳しく見てみましょう。
・和室の床材の交換
畳を撤去してフローリングに張り替えますが、畳の厚みとフローリングの厚みが異なるため、リビングのフローリングの高さに合わせる下地の木工事が必要になります。また畳の処分費用も発生します。
なお、今まで使っていたリビングのフローリングと、和室に用いる新しいフローリングは、どうしても日焼けや色落ち等により、色みを揃えることは難しい、ということは注意が必要です。場合によっては同じ床材が廃番となり入手できず、似たような色柄のフローリング材を用いることがあることも考慮しておきましょう。
ここでは複合フローリング材を用いると仮定します。
・和室の天井と壁のクロスの交換
和室の天井は、一般的に木目調の天井材が用いられています。また壁も塗り壁の場合が多くあります。そこで天井と塗り壁をLDK同様クロスに張り替えます。
そのため和室の天井材・壁材を解体してクロスを張るための下地をつくる工事が必要になります。
ここではビニールクロスを用いると仮定します。
・押し入れの洋式化
和室にはたいてい押し入れがありますが、これを洋室に合う収納に変えます。押し入れをすべて解体して、多段の収納にするなどいろいろな方法がありますが、ここでは最も簡単な、扉だけを洋室に合う仕様に変えます。
具体的には押し入れの襖を取り払い、折り戸を備えます。
・間仕切りの設置
和室とLDKの間仕切りに襖がよく用いられています。これを洋室に合う2板の引き戸に変えます。
リフォーム内容 | リフォーム費用 |
---|---|
和室の床材の交換 | 約20万円 |
和室の天井と壁のクロスの交換 | 約37万円 |
押し入れの洋式化 | 約15万円 |
間仕切りの設置 | 約10万円 |
合計 | 約82万円 |
しかし、和室の洋室化とあわせて、タイミング的にLDKの床や壁も張り替えたいと考える人も多いでしょう。また、床や壁の素材と色も揃っているほうが、空間の統一感を出しやすくなります。
リフォーム内容 | リフォーム費用 |
---|---|
LDK・和室の床材の交換 | 約34万円 |
LDK・和室の天井と壁のクロスの交換 | 約87万円 |
押し入れの洋式化 | 約15万円 |
間仕切りの設置 | 約10万円 |
合計 | 約146万円 |
その他、リビングダイニングとキッチンが分かれている間取りや、キッチンが壁に向いていた間取りで、和室の一体化とあわせて対面式やオープンキッチンにしたい場合は、キッチン部分のリフォーム工事も必要になります。
なお、上記の費用は、採用する床材や建具のグレードによって異なります。あくまで目安なので、リフォーム会社に見積もりをもらって内容を検討するようにしましょう。
和室を洋室にして取り込み、広いLDKにリフォーム
それでは、リビングと和室を一体化して、広いLDKにリフォームした施工事例を見てみましょう。
まずは、和室を洋室にして取り込み、広いLDKにリフォームした施工事例です。
【施工事例1】愛犬たちと一緒に過ごせる、ホテルのような快適な空間にリフォーム
築38年のマンションを、愛犬たちと夫婦2人が快適に過ごせる住まいにリフォームすることにした施主。脚の小さな愛犬たちが安全に暮らせるよう、全体的に床の段差をなくしました。
さらに2つあった和室のうちの1つをLDKに組み込み、壁付けキッチンはリビングに向いた対面式へと変更。家族や愛犬たちを見守りながらキッチンに立てるようになりました。
広くなったリビングには、壁の手前にテレビボードを配置。その裏側には愛犬のケージがきれいに隠れるよう設置されています。そのため愛犬たちと同じ空間で過ごしながらも、ケージなど生活感のあるものが見えない、ホテルのような空間となりました。
【DATA】
リフォーム費用:1200万円(総額)
リフォーム部位:リビング・ダイニング、キッチン、洗面所、トイレ、浴室、寝室、廊下、玄関、その他
住宅種別:マンション
築年数:38年
設計・施工:サンリフォーム
【施工事例2】2人でゆっくり寛いだり、1人の時間も大切にできる開放的なLDK
実家だった築45年のマンションを、これからの2人の暮らしにちょうどよい広さにしようとリフォームして暮らすことにした施主夫妻。2人でゆっくり過ごせる空間をつくるため、キッチンと、ダイニングとして利用されていた和室を1つにまとめてLDKにしました。
その和室の隣にもう1つ和室がありましたが、そちらも洋室に変更。間仕切りには引き戸を設置しました。これなら2人でのんびりと寛ぎたい時は引き戸を開けて、LDKをより開放的にできますし、引き戸を閉めれば、妻のプライベートスペースとして使えます。あわせて押し入れなど既存の収納を改修し、デッドスペースを活用した収納も造作したので、広々としたLDKを常にすっきりさせておけます。
和室を取り込んだことで、広々としたLDKであり、夫婦2人の時間も、それぞれの時間も大切にできるLDKが生まれました。
【DATA】
リフォーム費用:1100万円(総額)
リフォーム部位:リビング・ダイニング、キッチン、洗面室、浴室、トイレ、洋室、収納、廊下、玄関
住宅種別:マンション
築年数:45年
設計・施工:JS Reform(日本総合住生活)
【施工事例3】和室を取り込み、キッチンが中心の広々としたLDKへ
施主がリフォーム前提で購入したのは、築27年のマンション。リビングダイニングの隣に和室がある4LDKで、キッチンはリビングダイニングとの間に壁があって、カウンター部分のみが開いているという間取りでした。
しかし施主は「キッチンを中心にした住まい」という自分たちらしい住まい像が明確でした。まずは和室とキッチンをリビングダイニングに取り込んで、広く開放的なLDKへと変更。さらに閉鎖的なキッチンではなく、キッチンをアイランドキッチンに変更しました。
旧キッチン部分に撤去できない柱がありましたが、そこは白いタイルで装飾。また梁など凹凸が目立っていましたが、キッチン・ダイニング部分をあえて下がり天井にして間接照明を備えるなど、デザイン的にも施主の希望通りの広々としたLDKができあがりました。
【DATA】
リフォーム費用:970万円(総額)
リフォーム部位:リビング・ダイニング、キッチン、洋室、寝室、浴室・バス、トイレ、洗面室、収納、書斎、玄関、その他
住宅種別:マンション
築年数:27年
設計・施工:アクアラボ
和室を取り込みつつ畳を残すリフォーム
続いて紹介するのは、和室をリビングに取り込んで空間を広げながらも、畳の良さを捨てずに活かすというリフォームの施工事例です。
【施工事例4】北欧スタイルに生まれ変わったLDKに、よく似合う和モダンな空間
内装や水まわり設備に古さが目立ちはじめた自宅マンション。施主は家族3人と愛犬が快適に暮らせる住まいへとリフォームすることにしました。
まずは生活の中心となるLDKを、観葉植物を飾ったり、好みの家具を揃えられる、北欧スタイルの雰囲気へと変更。また隣にあった和室は、リビングと同じフローリングとモダンな畳を敷き、壁に収納できる引き戸を設置しました。引き戸を開いてオープンにすれば、北欧スタイルのLDKの雰囲気のまま空間をより開放的にできます。
さらに滑りにくい床材や床暖房の採用、細かい物が片付く収納を備えるなど、愛犬と一緒に快適に過ごす工夫がいっぱい。施主はお気に入りのインテリアや小物、グリーンを飾って、毎日が充実しているそうです。
【DATA】
リフォーム費用:836万円(総額)
リフォーム部位:リビング・ダイニング、キッチン、洗面室、浴室、トイレ、ワークスペース、和室、洋室、収納、廊下、玄関
住宅種別:マンション
築年数:37年
設計・施工:JS Reform(日本総合住生活)
【施工事例5】従来通り和室が使えて、引き戸を開ければリビングダイニングが開放的に
住み慣れた築31年の自宅マンションをリフォームすることにした施主。リビングの広さと収納力の両立や、スムーズに動ける家事動線、設備や内装の一新など、不満をすべて解消したいと考えました。
まずはリビングダイニングに隣接している、タンス置き場になっていた洋室をリビングと一体化。さらに洋室にあった大切なタンスが収まるよう、高さや奥行きが計算された壁いっぱいの壁面収納がリビングに新設されました。おかげで細々したものまでスッキリ収納できるだけでなく、地震でタンスが倒れる心配もなくなりました。
さらにリビングダイニングと洋室に接している和室の襖を、3枚引き戸に変更。そのため、従来通り和室として使えるだけでなく、引き戸を開ければ広くなったリビングダイニングがさらに開放的になります。そんな新しく快適になったリビングで、施主は毎日充実した時間を過ごせているそうです。
【DATA】
リフォーム費用:1180万円(総額)
リフォーム部位:リビング・ダイニング、キッチン、洗面化粧台、バスルーム、トイレ、洋室、和室、収納、廊下、玄関 など
住宅種別:マンション
築年数:31年
設計・施工:JS Reform(日本総合住生活)
リビングに隣接する和室を子ども部屋にリフォーム
洋室化した和室の使い道は、リビングの一部にするだけではありません。洋室化した上で、リビングに接するメリットを活用することもできるのです。
【施工事例6】和室を洋室の子ども部屋に変更して、リビングから子どもを見守れる
20年以上暮らした自宅マンションの、リビングの狭さと暗さを解消したいと考えた施主。リフォーム会社から提案されたのは、対面式キッチンの位置と向きを変えることで、LDKを広々とさせる間取りでした。
キッチンの向きを変えるために、洗面室やトイレ、浴室の位置が見直されました。また洋室の1つは納戸としてスペースを縮小。さらに暗さの一因だった茶系のクロスは明るい白色に変更されました。こうして3LDKのまま広いリビングを実現することに成功。
さらにリビングの隣にあった和室は、洋室の子ども部屋に生まれ変わりました。壁の中に隠せる引き戸を開ければリビング空間がさらに広くなるだけでなく、リビングから子どもを見守れます。子どもが大きくなったら、北側に残っている洋室を子ども部屋に変えることも視野に入れてリフォームしています。
【DATA】
リフォーム費用:1290万円(総額)
リフォーム部位:リビング・ダイニング、キッチン、洋室、収納、浴室・バス、洗面室、トイレ、廊下、玄関、その他
住宅種別:マンション
築年数:23年
設計・施工:アクアラボ
リビングに取り込みつつ、ワークスペースを設置したリフォーム
昨今のテレワークの普及で、ワークスペースが欲しいと考えている人もいるでしょう。和室をリビングに取り込むと、広く開放的な空間がつくれるだけでなく、ワークスペースも設けることができます。
【施工事例7】リビングと程よいつながりを感じながら仕事ができるスペースに
子どもが独立し、これからの暮らしを考えてリフォームすることにした施主。要望したリフォームは、お気に入りのデザインで、家事の手間が減り、ゆったりと過ごせる住まいにすることでした。
まずはリビングと隣接していた和室をまとめて、LDKを広く開放的にしました。これならお気に入りの大きなソファやダイニングテーブルを自由に配置できます。また従来リビングダイニングとキッチンを仕切っていた壁をなくし、見晴らしのよいキッチンへと変更しました。
さらにリビングの壁の手前に上部が格子の壁を設け、リビングに向いた側には大型テレビを配置。裏側(壁側)にはパソコンの使えるワークスペースが設けられました。新設されたワークスペースは、リビングとほどよく繋がり感があり、急な来客時などにサッとものを隠しておけるスペースとしても重宝しているそうです。
【DATA】
リフォーム費用:770万円(総額)
リフォーム部位:リビング・ダイニング、キッチン、洗面化粧台、バスルーム、トイレ、洋室、収納、書斎、玄関 など
住宅種別:マンション
築年数:25年
設計・施工:JS Reform(日本総合住生活)
まとめ
リフォームによってリビングの隣にある和室を取り込めば、リビングを広々とできます。また置きたかった大型のソファなど、お気に入りの家具を置けますし、和室に窓があった場合、光がたっぷりと降り注ぐリビングにすることができます。
一方で、和室がなくなるということは、幼い子どもが遊べる場所がなくなるなど、デメリットもあります。ただし、畳を残すリフォーム方法もあります。こうしたリビングと和室の一体化によるメリット・デメリットを十分考慮した上で、自分たちに合うリフォームを行いましょう。
リフォーム費用の目安としては従来のリビングはほぼそのままで、和室を洋室化してリビングと一体化させる場合で約82万円といったところ。リビングとキッチンの床や壁も一緒に張り替えたり、キッチンの位置も変えるなどした場合は、さらに費用がかかります。床材やクロスのグレードによっても費用は変わりますから、必ずリフォーム会社から見積もりをもらって検討するようにしましょう。
監修/一級建築士 柏崎文昭(甚五郎設計企画)
構成・取材・文/籠島康弘
イラスト/杉崎アチャ